進撃の整動鍼(2)  技術の選択を

      2017/05/29

前回までのあらすじ

念願の鍼灸院を開業した舟橋。

好きなアニメから院の名前を決める等、お世辞にも計画的と言えない経営がスタート。

運良く好調な滑り出しをみせるも、水面下では様々な問題が噴出し始めていた・・。

開業1年でふりだしに戻る

開業から半年、ぐんぐん上がっていた売り上げはその年の10月をピークに下降。

1周年を迎えた2月には開業時とほとんど変わらないレベルになっていました。

 

冬登山にスニーカーと100均のカッパで挑み、凍死しかける程度に危機管理能力の低い僕でもさすがに焦りだしました。

 

 

一体なぜなのか・・。

おもわず酒を煽りそうになりましたが、下戸なのを思い出してコーラを一気飲み。

 

本当は、コーラを飲まなくとも原因は分かっていました。

こういう時って、なにかで勢いつけないと原因と向き合えないんですよね。

 

トリガーポイント、躍進

ほとんどの鍼灸師は、鍼治療に対する考え方や治療法をそれぞれもっています。

古い表現ですが、〇〇流、□□法などと言った流派に所属している、と思ってもらってもいいでしょう。

そんな中、僕が治療の主軸としていたのはトリガーポイントという治療法でした。

修行時代から慣れ親しんだこの治療法は

 

・痛みの原因となる部位に鍼をうつ

ズンと重い感じと共に痛みや症状が再現される

・高い鎮痛効果

 

が特徴です。

 

 

鍼灸の専門学校を卒業した時に、「自分には何の技術もない」と思った僕は、圧倒的な鎮痛効果を持つトリガーポイントを自分の主軸とするべく、修行に励んでいました。

実際に、頭痛や肩こり、腰痛、坐骨神経痛に高い効果を発揮しており、修業先の治療院はいつも患者さんが絶えない状況。

 

専門学校では、ツボの位置や効果などの東洋医学的な知識と同じくらい、筋肉や神経などの西洋医学的な知識も学習します。

これらを勉強しているうちに、東洋医学の神秘性に惹かれるタイプと、筋肉・神経の働きを重視した西洋医学的な鍼治療を目指すタイプに分かれます。

 

僕は手首にある脈拍の変化や、舌の色、状態などから治療方法を決めていく東洋医学よりも、体の姿勢/動きから問題のある場所を決めていく西洋医学的な治療法の方が分かりやすくて好きでした。

 

前述のトリガーポイントも、西洋医学的な治療の1つです。

理論のシンプルさ、応用範囲の広さもあって僕はどんどんトリガーポイントにのめりこんでいきました。

修行先の院長のカリスマ性に惹かれたことに加え、週に何度か同志と集まって練習。

 

効果が出る→嬉しい→もっと勉強する→より効果が出る

 

こんな好循環に乗っていました。

 

旨味のない台湾らーめん

その好循環に乗ってグリーンノアを開院。

治療院のレイアウトも、トリガーポイント治療に合わせて最適化しました。

 

しかし。

 

当時の僕は、開業当初の好調さにかまけて本質的な部分が見えていませんでした。

 

トリガーポイントは太めの鍼をたくさん打ち、さらに深く刺すことが多い治療法です。

また、一般的な鍼は4〜5cmくらいの長さなのに対してトリガーポイントでは最大10cm超の鍼を使用していました。

 

・・・・。

昔自分がやっていた治療法だけに、少し遠慮がちに書いてますね。

 

はっきり書きましょう。

 

トリガーポイントはその刺激が強さから、痛いことが多かったのです。

太い鍼をたくさん打てば、ズンと重い感じ=「響き」が起こります。

響きは別名「二次痛」とも言われ、初めて体験すると「痛い」と感じる人も少なくありません。

 

そんな時も

「これは痛みではなく響きです!」「治療上必要なものです!」

 

患者さんにもそう伝えていました。

 

しかし僕自身は、この鍼の響きがとても苦手だったんですね。

「これは痛いんじゃない、響きだ!」と言われても、自分にとっちゃ痛いんだから仕方ない。

激辛料理の店をやってるのに自分は甘党みたいなもの。

そのあたりを分けて考えられるタイプなら良かったんですが、僕は違いました。

 

「自分が受け入れられないことを、患者さんにやっている・・」

 

心のどこかに閉まっていた迷いは治療にも現れてくるもの。

そして、心の中と行動が一致していないまま行う治療はどこか中途半端になります。

トリガーポイント的にはもっとたくさん打たなけれいけないのに、本数を減らしてみたり。

もっと深く打たなければ効果が期待できないのに、遠慮がちになったり・・。

そしてその結果、あまり効果が出ない・・。

 

「患者さんにとっては刺激が強いのに、効果は今ひとつ」という旨味のない台湾らーめんみたいな状況になっていました。

そして、そんな状態を全く好ましくないと思っている自分。

 

自分が「良い」と思ってもないもの提供している治療院が、繁盛するはずはありません。

 

とどのつまり、原因は治療法ではなく「自分のやっていることに疑問を頂いたままの自分自身」だったのです。

 

注:トリガーポイントそのものはキチンとした治療法であり、結果を出している先生もたくさんみえます。

 

ある青年の一言がきっかけ

そんなある日、20歳くらいの青年が来院してくれました。

聞けば鍼が初めてとのこと。

首が凝って仕方ないとのことなので、トリガーポイント的な治療=首に鍼を何本か打ってしっかり効かせる治療を行いました。

 

その時の僕としては、

「鍼が初めて+鍼を怖いと思っている」患者さんだったので、かなり控えめにしたつもりでした。

 

しかし、治療後に患者さんにどうですか?と聞いてみると、

 

「治ったけど、めっちゃ痛かったです」

 

とはっきり言われてしまいました。

 

この時に、

「いや、それでも治ったからいいじゃないですか」

 

そう言い切れるなら、そのままトリガーポイントを突き詰めればいい話です。

修業先の院長は、その技術もさることながらこういった時に「言い切れるタイプ」でした。

カリスマ性のある院長が自信をもって言い切ると、患者さんも

 

「そういうものなのか」

と納得されることが多かったです。

 

しかし、僕は「言い切れるタイプ」ではありませんでした。

 

Who am I

開院してからはっきりわかったことがあります。

それは、僕にはカリスマ性のようなものはほとんどない、ということ。

 

「やる前からわかるだろ!」

と怒られそうですが、自分のことは自分が一番わからないものです。

 

恥かしい話ですが、豪傑のような風格を持った院長のもとで修行させて頂くうちに「自分も開業すればこんな風になるに違いない」と薄ら寒いことを平気で考えていました。

けれども、持って生まれた体格・性格・風格が違いすぎるので、同じ方法でやっても結果が違ってくるんですよね。

(僕は豪傑の影で俳句でも詠んでいそうなタイプです)

 

何のことはない、修行中にうまくいっていたのは同じ空間にいる院長の力であり、僕の力ではなかった、というわけです。

 

・カリスマ性や風格はない

・刺激が強い方法は好きじゃない

・自分が受けられないものを提供はできない

 

開院してから、この辺りのことに気づいてしまった僕は焦りました。

 

そうこうしているうちに、治療はますます中途半端な状態になり、売り上げも下降するばかり。

 

 

 

なんとかしなくては・・!

 

 

Changes

開業時はトリガーポイントでやっていくんじゃ〜!と息巻いていた僕も、さすがに治療技術の変更を検討し始めました。

治療院にとって、売り物である治療技術をゴッソリ変更するのは、車のエンジンをまるごと取り替えるくらいの大工事です。

 

また、ひとくちに鍼と言っても治療技術は様々。

例えば、ご飯食べにいこう!という場合にも

和食/洋食/中華/ファーストフードと幅広いのと同じように、鍼の中にいくつもの流派=治療技術が存在します。

 

いくつもある治療技術の中で、グリーンノアにインストールする治療方法は何がいいのか。

 

「とりあえずなんでもやってみればいいやんけ」と思われそうですが、技術を学ぶには時間的/金銭的投資が必要です。

前述の通り、絶賛借り入れ返済中の僕は、なんでもかんでも試せる状況にはありませんでした。

ガス欠気味の車でガソリンスタンドを探すが如く、慎重に選ばなければなりません。

そんな中、僕が考えた条件は

 

・はっきりと効果があること

・「気」を感じなくてもできること

・刺激が少ない治療法であること

 

の3つでした。

はっきりと効果があること

治療なんではっきり効果があることは大前提です。

保険を使ったとしても鍼灸治療は安くありません。

少し変わったかな?程度の変化では、意味がないですよね。

 

「気」を感じなくてもできること

こういうこと書くと東洋医学原理主義者の方から怒られるんですが、「気」と言われても正直ピンとこないんですよね。

もちろん、「この人とは気が合うな」とか「雰囲気がいいな」レベルの気であればわかりますが、曖昧な気の概念を治療の中心に据えるのは考えにくいことでした。

 

刺激が少ない治療法であること

トリガーポイントはどうしても刺激が強く、修業先の院でも患者さんの悲鳴が絶えませんでした。
(もちろん、治療後は笑顔になっていました)

しかしワガママな僕は、もっと少ない刺激で大きな効果をあげたいと考えていました。

 

・・・

はい、本当に考えてるだけだったんですね。

どうせそんなの無理だろう、と。

 

しかし、人生は面白いものです。

チェンジズ!と歌ったデビットボウイの寿命が尽きようとしていた2015年末、グリーンノアに転機が訪れます。

 

I said that time may change me

But  I can't trace time

時間は人を変えるんだ

人は時間に追いつけない

だから自分が変わるんだ・・

Changes/DAVID BOWIE

 

つづく・・。

次回 進撃の整動鍼(3) 活法、襲来 です。

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