「鍼灸に副作用はない」
という治療家の方が多いです。 本当にそうでしょうか? 敢えて言いますが、副作用はあります。
鍼をうつことで身体に起こる反応の中で、好ましくないものを「副作用」と呼びます。
作用と副作用は表裏一体で、痛みやしびれがなくなるという作用があるからこそ、治療後のだるさや内出血という副作用も存在しないわけではありません。
鍼灸師としては、ただでさえ痛そうな鍼に「副作用がある」とは言いたく気持ちも分かります。
しかし、「鍼灸に副作用がない」と言い切ってしまうのは、「鍼灸に効果がない」と言っているのと同じです。
副作用はあるが、その対策はしっかりしている、というのがベターな回答だと考えています。
では鍼の場合、どんな好ましくない反応が起こるのでしょうか?
治療後の瞑眩(めんげん)反応
治療後に「気分が悪くなる」「下痢気味になる」「めまいが起きる」等の反応を 「瞑眩(めんげん)反応」が起きることがあります。
原因と対策
「瞑眩(めんげん)反応」とは、迷走神経反射です。
分かりにくい言葉なので例をあげますと、注射針を刺した際に、「気が遠くなる」、あの反応です。
起きやすい状況としては、
・うつ鍼の本数が多い
・鍼を深く刺している
・患者さんが鍼に慣れていない
といったケースで起きやすいです。
なぜ起きるかというと、
鍼を刺すことで、身体側はリラックスするのですが、リラックスが急激過ぎたりすると、血圧低下、脈が遅くなる等の反応が起きて、脳への酸素(血液)が不足します。
その結果、酸素不足が起きて、「瞑眩(めんげん)反応」となって出てきます。
対策は簡単で、
・そもそもの鍼の本数を多くしない
・必要以上に深く刺さない
・鍼を怖がっている患者さんに無理をさせない
という方法が有効です。
これらの対策は寿司屋でわさびの量を減らすようなものなので、一般的な鍼灸院では比較的簡単に行えるものです。
もし仮にこれらの反応が起きたとしても、慣れている鍼灸師さんであればきちんとリカバリーできると思います。
(普通に学校で習う範囲のことですからね)
しかし、こういった対策もなされず、治療後に気分が悪くなったと言ってもきいてもらえない場合は通う院を変えた方がいいかもしれません。
内出血(俗にいう青あざ)
頻繁に起きるものではありませんが、鍼を使う以上、「絶対に内出血しない」というのは不可能です。
血管には太い細いがあり、どうしても細い血管ほど鍼がかすめると破れる→内出血となりやすいです。 ©wikipedia-mykreeve
原因と対策
内出血を完全に防ぐことは難しいですが、当院では使用する鍼の質にこだわり、さらに打つ鍼の本数を可能な限り少なくすることで、内出血のリスクを減らしています。
まとめ
少しネガティブな話になりました。
しかし、闇雲に『鍼は怖くない』と言葉を並べるより、敢えてリスクと対策を公表することで、安心して頂きたいという思いです。
”副作用がない” とか、”身体がよくなる為の反応である”というのは少々非科学的かもしれません。
もし仮に、「鍼灸は副作用はありません」と聞いていたのに、先のような瞑眩(めんげん)反応や内出血が出たら「副作用ないなんてうそやんけ」って思いますよね。
逆説的に言うならば、これらの(確率は低い)副作用を余裕で越えるメリットが鍼灸にはあります。