DNM

鍼灸師がDNMを勉強した話 (前編)

わからないが回る,そんなのは・・

ここ最近,仕事に行き詰まりを感じていた。

臨床上の疑問なんて尽きないし,「お前の勉強不足だろ!」と言われたらそれまでなんですが

1.症状がよくなるときと,そうでもないときの違いがわからない。

2.血流よくなって症状が治る,の説明に矛盾を感じる。

3.鍼で知覚過敏が軽減していくのはわかっていたが,説明ができなかった。

4.自分の腰痛が治らない。

5.同じ症状でも改善スピードの個人差が大きい

という行き詰まりがありました。

 

血流に関してはこういう機械を使わせてもらって血流変化を調べたりもしました。

(結果,刺鍼時に動脈血が増える場合も減る場合もある)

血流だけで考えると,お風呂に入ったり運動する方がマシなのでは?という疑問が解消できませんでした

 

数年前から自分自身,腰痛が酷かったです。

スポーツ中/仕事中にぎっくり腰。その頻度,月に1回以上。なんだこれ。

腰痛で鍼をうけたけど,その場では解消してもすぐにまたぎっくり腰を起こす「プロギックラー」と化していました。

(土曜日のように忙しい仕事の日は,途中で前屈できなくなってました。つらすぎる。)

 

自分の院は逆流性食道炎がメインです。

実は,胃カメラで異常がない逆流性食道炎,というものが増えているんですね。

非びらん性胃食逆流症というものです。

胃酸が逆流してないのに,胸焼けがする,ノドの違和感がでるものです。

ガイドラインでも知覚過敏が原因と言われてますし,鍼でたしかによくなります。

よくなるからこそ,なぜ鍼で知覚過敏がよくなるのか?というのは,ドラえもんにおける4次元ポケットなみの重要さがありました。

(よくなるなら機序はどうでもいい,という方はここから先は読む必要ゼロです)

 

解決したい,超音速で

知力低めの自分でも,知覚過敏に神経が関わってることは予想できました。

しかし筋肉やツボの勉強はしてても,神経は苦手分野。

臨床で神経を意識することは少ないし,なにより基礎知識が足りません。

○○が△△して知覚過敏が緩和する。この方程式を考えると

 

鍼をして骨格筋が弛緩して知覚過敏緩和・・・・?

臨床歴15年もあってこの思考の浅さはやばい!

このままじゃ,とにかく治るからいいじゃん!的な思考になってしまう!

どうにかしなければ!

 

出会いは突然に

そう思っておもむろにTwitterを開くと(オイ

こんなTweetが目に入ってきました。

鍼の効果がプラセボ??

んなわけないじゃん!と釣られて(失礼)コラムを読んでみると,最後に書いてある「皮神経」というワードが引っかかったんですよね。

今まで何故か無視され続けてきた「皮神経」。

(中略)

身体に触れることは皮膚に触れることであり、皮膚に触れることは皮神経に間接的に触れるということ。

そして、身体を動かすときには皮膚にテンションがかかります。その皮膚には皮神経という神経が沢山あり、そのテンションの影響を受けます。

不思議ですが、マッサージにしても徒手療法にしても、ストレッチにしても、その皮神経は無視され続けてきました。

しかし、皮膚の感覚はとても大切で、身体の動きに関する情報源にもなります。

また、皮膚からの侵害受容刺激を脳へ伝える役割もあります。

また、腰痛や背中の痛み、首や肩こりの原因の一つとして、皮神経が関与している可能性も指摘されています。

出典:皮神経セルフケア出版しました

骨格筋/筋膜/血流だけで全てを説明するのはムリ!

ってことは薄々きづいていたので,DNM JAPANの方が出版している皮神経セルフケアという本を購入してみました。

目次はこちらに書かれているので,一度みてください。

盛り沢山です。

とくにこのあたりを読むだけで発見があると思います。

コリを緩めるには?

神経系とは?

末梢神経は動く

神経の神経

末梢神経には血流がある

痛みは脳からのアウトプット

 

骨格筋の緊張をコントロールしているのが神経なので,神経をどうにかすることが必要かな?と思いはじめていました。

 

話がかわりますが,

国語80点 数学60点 英語20点

の成績なら,英語が一番伸び代ありますよね?

自分の場合

筋肉80点 ツボ60点 神経20点の状況だったので,少し勉強するだけで発見がたくさんありました。

神経幹神経すげー!みたいな。

 

で,話を戻すと皮神経セルフケアの内容を実践してみたら

「ガラスの腰」「むしろ割れたガラス」と噂された自分の腰痛が,かなりよくなりました。

前屈しても大丈夫だし,常に感じていた「ぎっくり腰前の恐怖感」がない!

これ,,面白いです!

 

そうだったのか!! DNMってなんぞ?

DNMをわかりやすく説明するために具体的に内容を説明しますね。

何度かDMMってうち間違えて焦りましたが,

Dermo=皮膚

Neuro=神経

Modulating=調節

の頭文字をとった名前です。

「なにするか,全くわからん!」

わかります。自分も英語3文字の治療法って難しくて敬遠していたので。

雰囲気として「バカお断り」感あるじゃないですか。

実際はそんなことないんですが,池上彰さんばりに説明しましょう。

 

DNMの手技をカンタンにいうと神経の状態を変えて鎮痛するもの,です。

本当はもっと広い概念なんですが,寿司とは酢飯の上に生魚を乗せたもの,くらいのざっくりさだと思ってください。

「神経をどうにかすると,なぜ鎮痛するんじゃい!」とお嘆きの紳士淑女の皆さんのために流れを書いてみました。

①神経が圧迫されたり絞扼すると神経内の血流が低下

②伝導障害で痺れ

③長引くと浮腫

④神経内の内圧が上がって血行不良で感覚異常などが起きる

⑤この状態は痛いので逃避反射が(連続性をもって)起きる

⑥筋緊張=コリ

※ちなみに逃避反射は熱いものを触れたときに手をサッと引く反射のこと。一過性の筋収縮と思ってましたが,どうやら一過性ではなさそうです。

つまり,骨格筋の緊張が神経の絞扼でおきる。

その神経の状態を変えることで骨格筋も弛緩して痛みが緩和できる。

 

桃太郎を桃から生まれた子供が鬼をやっつける話,ばりにようやくしてますが,中身はこんな感じです。

(本質は脳を絡めた話なんですが,ここでは割愛!)

例え話ばかりでもアレなので,具体的な話をしましょう。

この青いのが上殿皮神経です。

自分の腰痛の原因の1つはこれでした。

腸骨稜からチョロっと出てるようにみえますが,実際は

胸腰椎〜臀部に分布する神経です。

この神経が

骨と筋 (腱膜)などの硬いものと硬いものの間で挟まれると神経内の血流が低下して,痛み→逃避反射→骨格筋の緊張が起きる,ということですね。

「挟まれるといっても,常に挟まれてはいるじゃん!」

鋭い指摘です。

正確には前屈など神経が伸ばされる姿勢や,起立筋にテンションがかかると,神経に圧がかかるようです。

で,閾値を超えた時に痛い,と。

 

見せてもらうおうか, DNMの力とやらを

このままだと絞扼→痛い→逃避反射→血流低下→痛い・・・の悪循環が起きますので,どこかで断ち切らないといけません。

ここで手技の出番です。

ざっくりですが,絞扼に対してどんなことをするのか?だけ解説してみましょう。

①ポジショナルリラクゼーション

・神経を絞扼している対象(骨格筋など)が弛緩する姿勢をとる

・神経の状態が変わるので,血流が回復して逃避反射も弱まる→筋弛緩

・気持ち良くて寝ます

②コントラクト・リラックス

・絞扼の原因となる筋に対して,等尺性収縮と弛緩を繰り返すことで神経の血流改善や炎症物質の排出を行う

・短時間でスッキリします

他にもバルーンテクニックやスキンストレッチ,ツイズルなど種類が豊富!

 

話を腰痛に戻すと,皮神経セルフケアは,ポジショナルリラクゼーションを自分で行う感じです。

上殿皮神経にたいして皮神経セルフケアを行うと,かつてないほど腰が楽でした。

おお・・・床に落ちたゴミが拾える!感動!

 

・・・・おほん!

そんな折にDMN JAPANからDVDが発売されるとのこと。

千載一遇のチャンス!持続化給付金で買うことにしました。

 

眠りとDVD!DVD!

このDVDがまたぶっとんでいて,35分なのに対象神経が15種類もあるメガ盛りっぷりです。

DNM オリジナルDVD

メモしながら視聴しましたが,いい意味でボリューミーすぎてメモが追いつきません。

じゃあ難しいのか?と言われるとそうではなく,やり方さえ覚えればすぐにできる内容です。

僕も昼休みに視聴して,午後からの患者さんに肩甲背神経のポジショナルをおこない,「背中がめっちゃ楽」と言われたほど。

所要時間も3分。

やるとわかりますが,神経の血流がよくなると,周囲の骨格筋がズルズルっと緩んでいくのがわかります。

僕も治療家の端くれ,骨格筋を弛緩させる手技はいくつか知ってますが,患者さんの反応が他と段違いで,

・気持ちいい

・眠い

・つまりがなくなった

とのこと。

今までも眠る人はいました。

中には自分の話がつまらなすぎて眠っている人もいたと思いますが, DMNの手技は寝る率がとても高いです。

体感値ですが,7割以上の人は寝てるじゃないかな?

他の治療法がいい悪い,とかではないんです。

神経系にフォーカスすると,人はここまでリラックスする。

そのことを知れてよかったな,と心から思います。

 

Go To DNM

話を戻します。

本を読んで,DVDをみて,DNMを世界を知ることができました。

しかしそれは,ドラクエで言えばホイミを覚えた程度のもの。

DNMを学ぶためには,東京で全12日のプライベートレッスンを受ける必要がありました。

 

興味はある。

だけど

費用も安くはないし時間もかかる。

それでも,自分の知らないことを知りたい。臨床上の疑問を解決したい。もっと患者さんの回復スピードをあげたい。

シュートを放たずに点を取れる事は、滅多にない。人生も

孫正義

放っておいても,疑問が解決することはないでしょう。

不決断こそ最大の害悪

ルネ・デカルト

オッケー,デカルト。行ってみようじゃない。

勇気を振り絞って,12日間のプライベートレッスンに申し込んでみました。

後編に続く

-DNM