鍼灸師として活動していると、いかに鍼が知られてないかを実感します。
今回は、実際に僕が見聞きして「えっ」と驚いた誤解の数々を紹介したいと思います。
鍼に副作用はない?
これはよく聞く言葉です。
あくまで僕個人の見解ですが、鍼にも副作用はあります。
というか効果があるから、その反面副作用もあるんですよ。
具体的には、痛み・違和感・内出血・鍼の後の湿疹などがあります。
ただ、その副作用の対策をある程度しているから、一見ないようにみえるだけですね。
関連記事:鍼に副作用があるか、正直に語ります。
鍼は痛くない。
物理的に鍼が侵入する以上、やはり無痛ではありません。
少なくとも10本打てば1本か2本は痛みはあります。
ただそれは注射針の痛みと比べるとかなりソフトですね。
これに関しては修行時代に苦い過去があります。
当時、修業先の方針で「鍼は痛くないと患者さんに説明するんだ」と言われていました。
僕自身そこの鍼は痛いと感じていたにも関わらず、患者さんに
「これは痛くないんです、効いているですよ」
と説明していました。
そう説明したあとにうつ鍼が痛かった時には、患者さんから「ブチ殺すぞ」と言わんばかりの目で睨まれましたね。
痛くないと説明することは、鍼の間口を広げるには一役買うかもしれません。
ただ、そう聞いて恐る恐るその間口をくぐった患者さんにうつ鍼が「1本でも」痛かったとしたら、その説明はやはり嘘になる。
そして、自分だったらその相手のことは信用しません。
正直に説明した方がフェアなんじゃないかな?と思います。
鍼はなんにでも効く。
鍼の効果は幅広いですが、限界はあります。
というか、個人で対応できる幅は無限じゃないんですよ。
できることもあれば、できないこともあります。
ひとくちに料理人といっても和食・フレンチ・中華と幅広いように、鍼の対応できる疾患も鍼灸師によりけり、です。
たとえば
腰痛に強いところ、耳鳴や難聴に強いところ。
さらに不妊症に強いところや眼の症状に強いところ。
さらには、お腹の症状である過敏性腸症候群専門の治療院もあります。
幅広すぎてなにに効くのかよく分からなくなりますよね。
もし困ったら「地域名 鍼 症状(腰痛)」などで探してみてください。
また、友人に鍼灸師がいればどこが良いのか相談してみてもいいでしょう。
自分にできることは受けますし、できないことはできないとお断りしています。
マイナスに考えると、鍼はなにに効くのかわかにくいですが、プラスに考えればそれだけ多様性に富んでいるわけです。
鍼は神経を殺している
これは、ご飯食べにいった先の店主さんに聞かれました。
本当に神経を殺す(傷つける)なんてしちゃったら、それはもう事件です。
鍼は鎮痛効果があるので、神経を殺すなんて表現になったんだと思います。
鍼を打った場所と脳内で鎮痛性物質が分泌されるので、今まであった痛みが抑制される、というのが今のところ解明されているメカニズムです。
個人的にはもっと大事なことがあると思うんですが、それはまた別の機会に。
鍼は秘孔をついている
これたまに聞かれるんですよ。
実は北斗の拳みたことないので、あんまり分からないんですが、グリーンノアで画像のような施術を行うことはありません。
とまあこれで終わりもいけないので、漫喫でシンを倒すくらいまで読んでみました。
なるほど、ケンシロウが指でひと突きすると相手が「ひでぶ」とか叫んで死ぬんですね!
鍼と全然違うやんけ
と思いましたが、要はピンポイントの刺激で大きく変わる=秘孔という意味なのかもしれません。
ちなみに、鍼1本で症状が改善することはあるけれど、北斗の拳のようなエキセントリックなリアクションを患者さんがするわけではありません。
また、ジェット・リー主演のキッスオブザドラゴンという映画にも鍼が出てきます。
ネタバレしないように書くと、あるシーンでジェット・リーが首に鍼をうつと相手がぶっ倒れるシーンがあります。
あれを観て、鍼ってあんな風になるの?と聞かれたこともありますが、まずありえません。
(正確には、たったまま首に太い鍼を打てばありえないこともないですが、必要性がないのでしません)
最後の質問者
10年前に鍼灸の国家資格を取得した時に父から「人の体に鍼させて治すのか?」という膝から崩れ落ちるような質問を受けました。
その頃から、「鍼とはなんぞや」と説いてまわっている気がします。
別に伝えることが義務だとか、そんな風には思っていませんが、鍼に関して聞かれることが多いのでブログの記事にしました。