鍼はクセになる?
「鍼はクセになるって言われたけど、本当ですか?」
患者さんからこんな質問を受けたことがあります。
この質問の究極の意味は「鍼は依存性がありますか?」ということでしょう。
結論からいえば、鍼が癖になったり依存症になる人はまずいません。
理由を書いていきましょう。
エンドルフィン
鍼を打たれると脳内でエンドルフィンが分泌されます。
(本当は内因性オピオイドという総称がありますが、省略しますね)
このエンドルフィンには鎮痛効果と依存性があるんですね。
エンドルフィンは、マラソン中の高揚感であるランナーズハイやギャンブル依存症の人がギャンブルしてる時に分泌されます。
と、ここまで聞くと鍼も依存性ありそうじゃないですか?
しかし、学生時代や周りの同業者に「鍼打ってもらいたくてしょうがない人」なんていませんでした。
学生時代なんてほぼ毎日のように鍼を受けますが、依存症になった話は聞いたことがありません。
むしろ、「実は鍼を受けるのが苦手」
という人の方が圧倒的に多いです。
実際にデータを見れば明らかで、1年間で鍼を受ける人は人口の5%前後です。
この数字を見たら、鍼が癖になる、なんて思えないですよね。
「3日前に打たれた鍼が忘れられなくて・・」という患者さんはいい意味でいないので安心してください。
臨床神経学の見地からも、鍼灸治療で変化する脳内物質は、薬物治療と比較してごく僅かだそうです。
このあたりを考えると、鍼治療そのものに依存性はなさそうですね。
鍼は癖になる、の真意
そうは言っても、どこか不安な気持ちは残るもの。
癖になってるように見えるのは、鍼の適応症状の多さかもしれません。
肩こり・腰痛・頭痛・膝の痛み・お腹の症状・膝の痛み・足のしびれ・ノドの不調・逆子・・・
と日常生活で感じる不調のほとんどに対応しているので、頼られるシーンはどうしても多いです。
「困った時は鍼だ」と信頼している人や、重い症状で長期に通っている人は、端から見れば癖になっているように見えるかもしれません。
これは癖になってるわけではありませんよね。
歯医者をイメージしてください。
虫歯を治すのに何回か通わなければいけませんし、再発すればまた通院するでしょう。
そんな時に「歯医者が癖になってるなあ」とは感じませんよね。
癖になってるのは虫歯の方であり、本質的に問題が異なります。
僕たち鍼灸師も、「クセにしてやろう」なんて考えていませんし、そもそもやろうと思っても出来ません。
何度か通わざるを得ないほど症状が強い、というのが実態だと思います。
少なくとも、自分を含めた周りの鍼灸師は、最短で最高の結果を出したいとそればかり考えている人が多いですね。
そのために努力を欠かさない姿勢の人ばかりです。
月に一度開催している勉強会
自分の方が、鍼が癖になってるかもしれません・・!