マッサージ師と整体師
先日このようなエントリーを書きました。
こんなの書いておいてなんですが、一方的にマッサージ師側の意見ばかり書いてても読んでる方は物足りないですよね。
ちなみにマッサージ師と整体師の違いは
名称 | マッサージ師 | 整体師 |
---|---|---|
養成期間 | 3年間の専門学校→国家試験 | 特になし。 数週間〜数ヶ月 |
広告に記載できること | 限られる。価格等は書けない | なんでも記載可能 |
医療保険 | 条件付きで使える | 使えない |
マッサージ | 可能 | 不可能 |
整体師さん側は堂々と価格を書ける事も手伝って、我々マッサージ業界は整体師さん側にいいように蹂躙されている面もあります。
いわゆる「整体師」について書きたいことはたくさんありますが、今回はその部分は封印!
マッサージ師として直に聞いてみたい部分を現役の「整体師」の方に匿名で答えて頂きました!!
インタビュー当日
穏便な話し合いの為、正装で突撃です。
※実際は全身ユニクロでスタバという大変穏やかな環境で行いました。
今回インタビューに応じてくれる方は
Aさん 30代
他の専門職を経て、現在はリラクゼーション業に従事している。
この業界に入って○年。現在は1時間6000円前後も価格で施術するタイプのお店で働いている。
業界に入った理由
「本日はよろしくお願いします!いきなりだけど、Aさんはなんでこの業界に入ったの?」
私はもともと違う種類の専門職で働いていたんですが、長時間労働など、待遇面でどうしても不満がありました。
そんな時に以前から受ける側として通っていたリラクゼーション系のお店が、未経験者歓迎でスタッフ募集していたので、思い切って応募したのがきっかけです。」
「色々ありますが、前職に比べて、お金の面での待遇がある程度よかったことです。
私以外にも、美容師さんや飲食業から転職される方も多いですよ」
ここだけの話、こういった業種では事務職から入った人よりも専門職から入った人の方が離職率が低いとのこと。
「夜遅い」「肉体労働」あたりの環境適応能力が必須ということですね。
研修の内容
「仕事する前に研修があると聞いたけど、どんな感じなのかな?」
「研修は2週間を1コマとして行います。内容はアロマや足ツボ等、自分のやりたいものを選んで2週間、学科と実技の研修を受けます」
「はい。場所は東京なので、安価で提供される宿泊場所から通いながら研修を受ける形になります。研修代はかかりませんが、宿泊代と交通費は自分持ちですね。」
「研修とはいっても一般企業とはちょっと違う形だね。その間の給料は出るのかな?」
「基本的には個人事業主扱いなので、研修中は給料は出ません。給料が出るのは現場に出てからですね。」
ちなみに個人事業主ではなく正社員の道もあるそうなんですが、転勤も多い&不定休の正社員はあまり選ばないらしいです。
この辺から少し踏み込んだ質問をしてみました。
整体師になる時、資格問題のことはみんな知ってる(聞かされる)の?
「今日はあらかじめ資格の話もすると伝えてたので、ズバリ聞いてくね。
整体師=無資格という現実があるんだけど、研修の時にそういった話はされるのかな?」
「国家資格については触れなかったですね。ウチで民間資格は取れますよという話はありました。」
「研修の最後に賞状をもらえるんですが、そこに厚生労働大臣の名前があるので、まあ資格なんだなと。」
「あ、でも研修中にマッサージという言葉を使ってはいけないとか、骨に対してアプローチしてはいけないという話はしっかりされます。」
代わりに、楽になる、緩和という言葉を使うように指導されます。
効果という言葉を使うのであれば、効果が期待できるというニュアンスで使うように指導されますね。」
「理論武装はしてるのね〜。そういえば、マッサージの定義って知ってる?」
「説明を受けた気がするけど、自分で説明しようとすると難しいですね。」
気になってたことを聞くことができました。
ちなみに厚生労働大臣のクダリは、厚生労働大臣がこのスクールは施術を認めてるわけではなく、あくまで事業団体として認可しているというロジックです。
山形県の工藤先生のブログより許可を得て引用させて頂きました。
休憩
「アナと雪の女王、塔の上のラプンツェルが好きです。・・この質問、なにか意味あります?」
(お堅い内容なので、気の利いたトークで場を和ませようとしましたが、完全に失敗したので次に行きます)
60分2980円のお店についてどう思う?
「最近増えてきている60分2980円のお店についてどう思う?」
私のところは歩合でも1分あたり約36円なので、時給で言えば2000円は超えます。
しかし60分2980円はそれ以下になります。
単価の低さを数こなして補うスタイルなので、中で働くひとは体を壊したりが心配ですね。」
「なるほど。ライバルとしてみるとどうかな?」
「向こうさんは価格で勝負しているので、そもそもの客層が違います。
私のところにみえるお客さんから聞いた話ですけど、スタッフさんの技術にかなりムラがある印象だそうです。」
A さんのところは60分6000円を超えるので、確かに客層は違いそうだ。
僕たちマッサージ師からみたら同じ「整体」でも、消費者の立場からみたらかなり違うのかもしれません。
国家資格はどう?
(これ、いやな質問だよな〜と思いながら最後の質問です)
「では最後に質問です。ズバリ、国家資格を取りたいと思いますか?」
「正直、(学校へ)行けるなら行きたいというところです。実際、私の会社のスタッフにも、柔道整復師(接骨院の人)は結構多いので」
「私は転職組なので、おおらかな基礎しかわかりません。2週間の研修だとどうしても学術的な基礎より現場対応力を優先し、あとは現場で補っていくしかありません。
ですが、適当なことをお客さんに話たくないので、勉強したい気持ちはあります。やはり本だけではわかりませんし」
「なるほど。今日は無理言って時間作って頂きありがとうございました。」
有資格者であろうと無資格者であろうと、結局目の前の人を喜ばせたいみたいな気持ちがエンジンだと思うんですよね。
そのエンジンを吹かす時に、資格の壁に邪魔されるのはもどかしくなってくるはず。
じゃあどうするか・・というところですが、これ以上踏み込めばただの説教おじさんになってしまうので、インタビューは終わりです。
まとめ
インタビューを読んで頂ければ分かる通り、Aさんはとてもしっかりした方です。
決して「マッサージ師の職域を侵食しよう」とかそんなことはもちろん考えていないと思います。
そもそも、この無資格問題は業界内でも色々意見があります。
僕も所属する業界団体は、無資格施術の取り締まりを看板に掲げていますし、僕も概ね同意見です。
しかしながら、民間人がタクシーのようなことを行うUber、民泊のAirbnb等の流れを見てると、そういった境界線のようなものはどんどんなくなっていくようにも思えます。
そんな中、「整体は無資格だー!」と叫んでも、周りからは「なんで無資格に負けとるんじゃ」と思われるだろうなと。
もちろん法律的な正しさも大切ですが、同時並行で国家資格持ちの違いみたいなもんを放っておかないと、自分たちの居場所がどんどん狭くなってしまいます。
実はそのあたりも準備OKなんですが、その前にまず
「あちらさんはどんなことを考えているのかな?」
という興味もあって今回の記事が実現しました。
Aさん、ありがとう!
初のインタビュー記事は思ったより大変で、時間がかかってしまいました。
なにが大変って、カメラマンなしでの撮影が一番大変でしたね。
↑コスプレは、外す時が一番切ない。
次回は「鍼灸師が鍼の血流動態をはかってきた(仮)」でお送りします。