院長の話

【時代】鍼灸師が遭遇したギャグみたいな修行の数々。

修行は必要なのか

鍼灸師をはじめ、美容師や理容師といった技術系士業の世界では、「下積み」と言われる期間が存在します。

古い表現でいえば、修行期間といってもいいでしょう。

 

かくいう僕にも修行期間がありました。

修行を労働と表現していいのか難しい部分もありますが、労働基準法的でいえばグレーどころかアウトなことが多かったです。

 

それもこれも「もっとうまくなりたい」と一心で我慢できましたが、今思えば一周回ってギャグみたいな話ばかりでした。

今回はそんな滑稽ともいえる修行時代のエピソードを振り返ってみたいと思います。

※極め付けのところを書いてます。しっかりした職場も多いので、安心してください。

 

実例

その1 FAXで履歴書をばらまいてた件

修行といえど、形式上は履歴書を持って面接を受けたりします。

僕が学生時代に師事したところは何店舗か展開しているタイプの治療院でした。

いわゆる本部のようなところで面接するんですが、面接後に僕の履歴書が全ての店舗にFAXで送られてたんですね。

初出社時に気づいたんですが、すごい雑に受付の上に僕の履歴書がポンと置かれてました。

別に気にしないけど、せめてしまっておこうよ。

まあ、こんなんは序の口です。

 

その2 テスト期間中に休めない上、順位が良いとけなされる

学生時代に治療院で修行していた友人から聞いた話。

友人のいた専門学校はテストも多く、範囲も広いんですね。

なので、テスト前とかはできれば休みたい・・。

けれど、そんなこと言おうものなら

「俺の時はそんな甘えたこと言わずに修行したもんだ」

とか

「勉強しなくても国家試験受かった」

なんて与太話付きで説教されるの言い出せないんですよ。

 

友人は優秀だったので、テスト前も働きながら、成績も学年トップをとったんですね。

普通ならすごいねって話じゃないですか。

ところが、友人は修業先の院長から

「テストで1位取るなんて、お前はロクなモンじゃない」

と言われたそうです。

泣けますね。

 

今思えば、学生という労働力がテスト期間中にいなくなると困る・・という事情があったようです。

それなら「頼りにしてる」くらい言ってあげればいいのに。

 

その3 給与明細がおかしい。

もう一つ学生時代の友人のエピソード。

修行といっても、最低賃金くらいは出ます。

 

と聞いて安心したあなたは気をつけた方がいいですね。

 

最低賃金でも週6とかで働くので、最低賃金でもまとまったお金になるんですよ。

初めてもらう給料。

修行といえど、もらっちゃいけないものじゃない。

「もらえるだけありがたいと思え」

そんなセリフにも違和感を感じなくなってきた1ヶ月目。

しかしこの給与明細はおかしい。

そういって送られてきた写メを見ると、驚くべき内容が・・

 

700円×120時間=84000円

84000円ー35000円(所得税)

給与 49000円

いや、税金そんなにかからんから。

時給でいうと400円少々。

どこの福祉国家だよっていう。

 

これが学校の先生経由で紹介された職場っていうのが闇深いですね。

 

その4 雇用保険に未加入

これは僕のエピソードですが、正社員と聞いて入社したつもりが、蓋開けてみれば雇用保険すら未加入のすごいとこでした。

雇用保険って、ひと月せいぜい数千円ですからね。

まさに経費削減の鬼。

労働基準監督署でもらえるパンフレットにも赤字で雇用保険と労災保険は必ず加入しましょうって書いてある。

おかげで退職後の失業保険ももらえませんでした。

笑うしかない。

 

そもそも修行って?

で、こういうとこの経営者ほど「昔に比べたらマシ」「俺の頃はもっとひどかった」っていうんですよね。

多分、それは事実なんでしょう。

事実なんでしょうけど、果たしてそれでいいんでしょうか?

 

 

僕は修行という制度自体を否定しているわけではありません。

なぜなら、学生のうちに学ぶ場は必要だからです。

ただ、こういった学生や従業員に高負荷を強いる院はあまり長続きしません。

今回例に出したところも、友人の修業先を除いて廃業しました。

 

そもそも修行というには精神を追い込んだり、最低賃金以下で働くことではありません。

修行とは

学問や技芸を磨くため、努力して学ぶこと。

デジタル大辞泉

だそうです。

 

修行だから不当な労働条件で働かせてもいい!なんてわけじゃなさそうです。

(書いてて当たり前過ぎて泣けてきました)

 

さいごに

とここまで書いてきながら、僕自身は修行先に育ててもらったと思っています。

このあたり、ブラック脳に洗脳されてるのか、本当に心から感謝しているのか正直自分でもわかりません。

自分1人で大きくなったわけではないですし。

今回は労働環境の面から書きましたが、パワハラがすごいとこもありました。

(タウンページをひたすら指圧する、機嫌が悪いとエアガンで撃たれる、質問に答えられないと街中を走らされる等)

 

きっとその経営者も、そうやって育てられてきたのかもしれません。

さらに言えば、こういった経営の基本的なことを学ぶ機会がなかったのかもしれません。

 

こういった理不尽の数々のせいか大抵のことでは動じなくなりました。

無意味に思えた修行が実は必要だったのか、今でも時々わからなくなります。

 

ただ、それはストレス耐性がついただけの話。

スキルや技術の取得に我慢や辛抱って不必要だと思いますね。

 

現に、修行という言葉の意味が

 

何かを我慢するとかでなく学問や技芸を磨くため、努力して学ぶこと。

 

というのは

それを物語っていると思います。

 

今だからこそ言えますが、

ブラック経営者のムチャに付き合って消耗する事を修行というならば、そんな修行は不要。

本来の修行の意味であるスキルの習得や技術力アップに時間を使った方がいいですよ。

-院長の話