やってみた

経絡がわからない鍼灸師が,「ツボがある本当の意味」を読んでみた

ツボがある本当の意味

冬は寒いですね。

冒頭からネタ切れ気味な舟橋です。

そんな寒さを吹き飛ばすかのような熱いタイトル「ツボがある本当の意味」が発売されました。

ざっとめくっても

  • 経絡は信仰である
  • 経絡・経穴は未完成
  • 鍼灸は伝統医学ではない
  • 教科書のツボが役に立たない理由

など,ごはん3杯はおかわりできそうな刺激的な見出しが並びます。

特に序章は予想以上に感情的なので必読です。

 

ツボってあるの?と思っていた。

かくゆう自分は3年前まで経絡どころかツボの存在が怪しいと思っていました。

ツボなんてないでしょう,と。

 

これは学生時代に受けた経絡治療で全く効果を感じなかった経験からきています。

腰痛も花粉症も東洋医学の大家の治療を受けても不発だったんですよね。

そんな流れでmixi(!!)では「東洋医学を信じられない鍼灸師」というコミュニティに入っていましたし,脈が変わってドヤ顔してる人を宇宙人でも見るような目で見てたんですよね。

しかし。

ツボなんてあるわけ無いと思って参加した著者・栗原さんの整動鍼のセミナーで,ツボに鍼をして予告通りの効果が続出するデモを見て改宗しました。

(この辺は進撃の整動鍼シリーズで書いてます)

とにかくツボに鍼をすると効果がハッキリ出る!という原体験は大きかったですね。

 

栗原さんという人間

この本は

整動鍼の開発者にして臨床家・古典マニア・大学で生物学を勉強されていた栗原さんならではの視点で経絡・ツボの話が書かれています。

読むまでは正直,栗原さんのブログも読んでるし,今更新しい発見もあるのかな(失礼)?

と思っていましたが,良い意味で期待を裏切られました。

まず序章。

経絡を信じる/信じないではなく、経絡の存在は確かめられていない、という現実を受け入れてから話を進めましょう。

とこの本を書くにあたっての決意が高らかに宣言。

鍼灸はこういうものであるとか,伝統的なものを受け継ぐといった受け身の姿勢に違和感を抱いていた人ほど感じるものがあると思います。

本書は東洋医学への深いリスペクトと,事実ベースのニュートラルな立ち位置という2つの視座で書かれています。

古典の情報が羅列されている本でもなければ、ツボのノウハウ本でもありません。

全編通して,ツボの謎を解き明かしてやる!という情熱で書かれています。

ツボの効果を確かめる為,鍼をするごとに体の全ての変化を確かめていたというエピソードをもつ栗原さん。

まるで砂場でアリのコンタクトレンズを探すような執着心が整動鍼の根幹です。

 

ツボがある本当の意味の内容

前置きが長くなりましたが内容に触れてみましょう。

本書は実践的な内容も多分に含まれています。

例えば養老というツボが胸椎4番・顎関節さらには○○筋に作用するなんて実践的な情報も載っています。

わかってる人なら,これだけで本買う価値があるのでは?

また皮膚緊張と動きの関係に言及。

詳しくは本を読んで頂きたいのですが,遠隔のツボで効果が出る仕組みについての考察が書かれています。

また経絡の流注を考察するときに気血に注目。

鍼灸師なら誰でも遭遇する流注通りでない反応。

このミステリーは2つの単語を整理するだけで解決できるのです。

謎を解く鍵は気血にあります。

卒業して3日で東洋医学概論の教科書が行方不明になった自分でも興味深いテーマです。

常識的に,見えないものより見えるものが最初の思考の対象になります。

最初に思考の対象となったのは,見えないではなく見えると考えるのが自然です。

見えるを観察することで見えないを想像していったのでしょう。

(中略)

気血ではなく血気と表す方が本来の姿に近いと言えます。

流注もこの順序に従って考察すべきです。

同じ鍼灸師ですが,こんなこと考えたことはなかったですね。

本書はこのように経絡の成り立ちを一つ一つ紐解き,真実に迫るミステリー的な部分があります。

東洋医学好きの人ほど見せられる内容なのではないでしょうか。

その他にも「ファシアと経絡」「局所鍼の問題点」「五十肩の治療が難しい理由」といった尖った内容が詰まっています。

東洋医学という巨人の肩の上に漫然と座るのではなく,常に検証する姿勢。

自分が東洋医学が苦手だったのは,あるかないかわからないものを盲信している姿勢でした。

そういった意味では,自分のような東洋医学に懐疑的な人間も一読の価値があるでしょう。

実際に栗原さんとお話ししたときも,

「自分がやってることが世間的に怪しいと思われているのが,ガマンできないんだよね」

と言っていました。

この気持ち,多くの鍼灸師が同意するんじゃないでしょうか?

 

本の内容が濃厚なので無理やりまとめにかかります。

この本を読んで,ツボは可能性の宝庫だと改めて実感しました。

ツボの研究がすすめば,困っている人達に福音をもたらす可能性が高いです。

鍼灸界に閉塞感を感じている人や閃く経絡は難しかったなんて人にぜひ読んでほしいですね。

3月24日(日)に東京でこの書籍の出版イベントが開催されます。

本を読んで興味をもった方はぜひ。

他で聞けない話が聞けると思います。

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