なんとなく、痛い方が効きそう
「痛いいいいいい!」
と芸能人が悶絶しながらマッサージを受けている、そんなシーンをテレビで見かけることがあります。
また、患者さんから「マッサージは痛い方が効くの?」という質問を受けることもあったり。
なんとなく、痛い方が効きそう。
これ、僕も自分がやる側になるまで思ってました。
しかし。
施術者側で、「痛い方が効く」と考えている方は僕の周りにはとても少ないです。
ですが、世の中には「痛い方が効く」と言って施術をしてるいる方もみえるようです。
一体どっちなんでしょう。
痛いマッサージとは?
※一口にマッサージと言っても色々ありますが、今回はオーソドックスな「押す」「揉む」という行為をマッサージとします。
そもそも痛いマッサージと言っても色々あります。
・テレビでたまに見かける足つぼマッサージも痛そう
・硬いからと言って腰をおもいっきり押されて痛かった。
・肩が凝ってる時に押されると痛気持ちいい。
3つとも全て、程度の差はあれ痛いマッサージですよね。
この痛さは我慢した方がいいのでしょうか。
それとも、我慢しない方がいいのでしょうか。
この「痛い」には実は2種類あって、
・凝っている場所を適度な強さで押された結果、痛いケース=痛気持ちいい
・そもそもの押す強さが強すぎる場合、または骨そのもの押してる場合=ただ単に痛い
この違いは超重要なんですが、あまりマッサージを受けたことがない方には分かりにくかったりします。
表にするとこうなります。
表の通り、「痛気持ちいい」と「ただ痛い」には違いがあります。
これを見ると「痛いだけマッサージ」よりは「痛気持ちいいマッサージ」の方が良さそうです。
ちなみに
リラクゼーションのお店とかで「力加減どうですかー?」なんて聞かれて、
(力加減・・・よく分からんぞ)
と思う方もいるかもしれません。
「力加減どうですかー?」の質問の裏には実は
『痛いまま我慢してても効果でにくいし、最悪の場合、痛くなりますよー!だから今痛かったら言ってくださいねー!』
という意味が込められていると思います。
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もし、ご自分にとって力加減がちょうどいいのかわからない場合は、「押された時に力が入らなけれOK」と思ってください。
逆に、押されて力が入ってしまったり、汗が出るほど堪えなければならない場合は、かなり我慢している状態です。
弱めてもらう方が賢明です。
身体にいいのはどっち?
「痛気持ちいいマッサージ」と「痛いだけのマッサージ」では、身体に引き起こす影響が違います。
ざっくりと分けると
・痛いだけのマッサージ・・・身体に緊張を引き起こす。
・痛気持ちいいマッサージ・・・身体がリラックスする。
専門的な話をすると、痛いだけのマッサージでは自律神経の「交感神経」の方が強くなり、リラックスモードではなくなります。
逆に痛気持ちいいマッサージは「副交換神経」が強くなり、リラックスモードになります。
痛いだけマッサージでは眠くなりませんが、痛気持ちいい=心地よい刺激であれば眠くなりますよね。
マッサージの目的は主にリラックスしてもらった上での回復促進なので、そもそもリラックスできない痛いだけマッサージは、マッサージ本来の目的を見失っている感があります。
ここまででは、痛いだけのマッサージは身体にとっていいことがあまりないように思えます。
痛くないと効かないというロジック
しかし、中には「痛くないと効かない」とおっしゃる方もみえます。
マッサージで揉んだり押したりする対象は、筋肉(とその周辺)です。
筋肉も生体の組織なので、強く押せば壊れます。
この場合の壊れるとは、筋繊維が切れることを指します。
もちろん、肉離れのように広い範囲で切れるわけではありません。
狭い範囲です。
その微細な傷は、修復されても元通りにはなりません。
筋肉ではない「肉芽組織」に置き換わってしまいます。
凝っているところ押されれば気持ちいですし、押される痛みを我慢することで、一時的に現在の症状(肩が凝る等)を感じなくなります。
ですが、時間が経てば再び凝ってきますし、傷つく→肉芽組織で修復というサイクルを経ている分、以前より硬く、緩みにくく、感覚も鈍くなってより強く押されないとわからない身体になっています。
強く押すマシーン VS 患者さんにとってベストな選択肢を探し続けるマシーン
こんな状態になると、痛いくらいでないと効かなくなっています。
しかし一生こんなサイクルを繰り返すのは何かが間違っていますよね。
そして、痛気持ちいいマッサージは一つの手段でこそあれ、目的にするのは何か違う気もします。
何か原因があって凝っているので、ただ凝っているとことをひたすら揉むのは問題の解決に向かっていない気がします。
当院でもマッサージをする場合がありますが、必ず目的ありきで行います。
当然のことながら、治療家は強く押すマシーンではありません。
百歩譲ってマシーンであるならば、患者さんにとってベストな選択肢を探し続けるマシーンでありたいです。
(痛くないマッサージはどうなのか?と疑問をもたれる方もみえると思います。
途中まで書きましたが、かなりのボリュームになってきたので、またいずれかの機会に書かせて頂きます。