世界の逆流性食道炎事情
タイトルのまんまなんですが,世界の逆流性食道炎事情を調べてみました。
日本で逆流性食道炎の原因を語る際に,「日本より欧米の方が多い」「食生活の欧米化によって日本でも逆流性食道炎が増加」など,欧米が逆流性食道炎の本拠地かのような扱いを受けています。
果たして本当にそうなんでしょうか?
また逆流性食道炎の原因としてストレス・喫煙・飲酒などがあげられていますが,なかには大酒飲みの喫煙者でストレスまみれの三冠王みたいな人でも逆流性食道炎じゃなかったりするじゃないですか。
あれはなんなのか。
実際に患者さんと接しているとタバコもお酒もやらず,食事も気をつけている方ばかりです。
一体なぜなのか?
そういったことの原因を調べるべく,今回は各国の逆流性食道炎の有病率・喫煙率・飲酒量および自殺率を調べてみました。
自殺率があるのはストレスの目安になるからです。
というわけで早速いってみましょう!
海外のデータを翻訳しながら,世界の逆流性食道炎の割合をまとめてみました。
国別ではないのでざっくりですが,カオスですね。 pic.twitter.com/ASdNbW84K3— グリーンノア鍼灸院@逆流性食道炎 (@GREENNOAH89) 2019年7月8日
GERDの有病率が北米で18.1%から27.8%、
ヨーロッパで8.8%から25.9%、
東アジアで2.5%から7.8%、
中東で8.7%から33.1%、
オーストリアで11.6%の範囲であることを示した。
、南アメリカの23.0%。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5753679/
しかしこの図はざっくり過ぎるので,もう少し踏み込んだ調査をしました。
各地域の中から代表国を選び,その国で逆流性食道炎がどれくらいの患者さんがいるのか(有病率),逆流性食道炎の原因の1つとされる喫煙率・飲酒量はどうなのか?
またストレスが原因と言われるので,自殺率を調査してみました。
このあたりを洗い出すことでなにか見えてくるかなと。
食生活についてはデータとして扱うのが難しいので今回はパスしています。
そのかわり,実際にロシアに赴いての現地調査,さらに語学学習アプリでできたロシア・イランの友人に逆流性食道炎について聞いています。
そちらも参考になれば・・!
それではいってみましょう!
データで見る世界の逆流性食道炎
有病率
有病率とは病気にかかっている人の割合です。
100%であれば国民全員がかかっていて,50%なら2人に1人がかかっています。
調査した際は数字にバラツキがかなりあったので,一番低い数字を採用しています。
ロシアとイラン多すぎ!
5人に1人以上が逆流性食道炎とか,多すぎますね。
なぜなのか・・?
その前に他の数字もチェックしましょう。
飲酒量
年間の飲酒量です。思ったほど差が出ないものですね。
ロシアではビールはお酒とカウントされていないのでは?という懸念もありましたが,2011年にはお酒と認められたので大丈夫そうです。
イランが0に近いのは,国民の99%がイスラム教徒であり,お酒を飲まないからです。
喫煙率 男性
日本の男性の喫煙率,まだこんなに高いんですね。
ロシアの喫煙率がえらいことに。
喫煙率 女性
この分野ではロシアが突出しています。
自殺率
ここでもロシアが圧倒・・!
逆流性食道炎の恐ろしさよりロシアの恐ろしさを紹介しちゃってますが,事実ベースなので仕方ないですね汗
データを並べてみました
ロシアがえらいことになってますね。
イランの有病率の高さを気になります。
ここからは各国のデータを見ていきましょう。
韓国
韓国は自殺率が10万人あたり26.9人と,日本よりも高い自殺率になっています。
厳しい学歴社会や所得格差など,原因は色々言われています。
そして男性の喫煙率も40%と高め(と言っても世界では40位,みんな吸いすぎ!)ですが,これは徴兵制がある影響で,軍隊生活中に喫煙者になるんだとか。
おまけにあれだけ辛い韓国料理食べてれば,逆流性食道炎になるのもやむなしかなと思います。
自分も韓国旅行へ言って焼肉食べた時,あまりの辛さに泣いた記憶があります。
肝心の逆流性食道炎はというと・・・
韓国の成人7人に1人は逆流性食道炎で苦しんでいることが分かった。性別では、男性の逆流性食道炎の発症率は女性よりも1.6倍高かった。
男性は女性よりも逆流性食道炎のリスクが1.6倍高かった。
出典:もっとコリア
アメリカ
データによって有病率15.1〜30%と差があるのがアメリカ。
アメリカのジャンクフード愛好家ぶりを見ていると,逆流性食道炎まったなしの状況に思えますがどうなんでしょう。
アメリカのマクドナルドでSサイズのドリンクは,日本のLサイズと同じ大きさなんですね。
デカすぎ!
逆流性食道炎のデータは・・
2014年の系統的レビューでは、米国の人口の15.1から30パーセント[DS1]がGERDを有していると推定されています。
https://www.healthline.com/health/gerd/facts-statistics-infographic#_msocom_1
#GERDとは逆流性食道炎のことです。
イラン
中東を代表してイランに登場していただきました。
イランの逆流性食道炎の割合は・・・
結果によると、イランの推定有病率に関連するデータは広い範囲を持っています。テヘランの研究では毎週の有病率は21.2%で、イランでの逆流の最良の推定値です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4017699/
これは興味深い内容で,イラン国民の99%はイスラム教徒なので牛肉/豚肉/アルコールを摂取しないはず。
つまり逆流性食道炎になりにくい食生活に思えるんですが,現実は有病率21%と高めの数値を叩き出しています。
これの意味するところはなんでしょう?
気になるので近々イランに現地調査に行きたいと思います。
ちなみに飲酒料は年間0.01ℓと限りなく0に近いです。
これはイスラム教圏の影響ですね。
一方喫煙率男性 21.2% 女性0.8%とお酒よりは嗜まれていますが,世界平均よりも低い量で推移しています。
気になったので,語学学習アプリで知り合ったイラン人に聞いてみました。
残念ながら会話がここで終わりました。
原因はわかりませんでしたので,あとは現地調査しかなさそうです。
カナダ
なんとなく健康そうなイメージのあるカナダ。
その実情はどうなんでしょう?
自殺率がそこそこ高いのも意外でした(12人/10万人中)が逆流性食道炎は・・・
有病率は10ー20%
カナダでは、GERDが最も一般的な酸関連障害です。カナダ人の約13%が毎週GERDの症状に苦しんでいます。人口の約4分の1(24%)が毎日やや頻繁に胸やけを経験しています。
https://badgut.org/about-us/newsroom/report-cards/gerd-report-card/
休業時間の増加(7%の欠勤)および仕事の集中の減少(18%が経験)
https://badgut.org/about-us/newsroom/report-cards/gerd-report-card/
英語をGoogle翻訳で和訳したものを掲載しています。
確かに集中力は著しく削がれますよね。
とはいえ,他と比較して特に多くもなく少なくもなく,というのがカナダの状況のようです。
イギリス
喫煙率が高い以外は特徴のないイギリス。
逆流性食道炎はというと・・
英国の有病率は、使用される消化不良の定義によって異なります。
そして12%から41%まで及びます
https://www.nice.org.uk/guidance/cg184/documents/dyspepsiagord-final-scope2
この12〜41%ってさすがに幅が広すぎると思うんですが,もし41%だとしたら多過ぎますよね。
日本の調査でもバラツキはあるので,ここでは低い数字を採用します。
オーストラリア
オーストラリアの一般診療に参加している患者におけるGORDと診断された有病率の推定値は、
オーストラリアの人口の11.6%
Gastro-oesophageal reflux disease (GORD) in Australian general practice patients
オーストラリアもイギリス同様,特に特徴のない数字です。
一口に欧米といっても差が結構でるもんですね。
メキシコ
週に1回以上、逆流 19.6%-40%
メキシコは有病率のデータが見つけられませんでした。
週に1回以上の逆流があるのは19.6〜40%とざっくりデータで出ています。
正直データがざっくり過ぎてなんとも言えませんが,最低でも5人に1人くらいと考えるとメキシコもなかなかですね。
ロシア
15歳以上の無作為化された1065人の成人を対象にモスクワで実施されました。
過去12か月間の頻度の高い、および時折起こる症状の有病率は、それぞれ、胸やけで17.6および22.1%、 逆流で17.5および21.8%でした。 GERDの有病率は23.6%であることが判明した。
きっちり有病率が出てるデータの中ではロシアが一番有病率が高いですね。
ロシアは飲酒が多そうなイメージですが,ここ最近は年間の消費量8.42ℓで日本は消費量6.82ℓ
と大差ありません。
だた喫煙率と自殺率がすごいことになっています。
喫煙率:男性58.3% 女性23.4%(日本:男性33.7% 女性11.2%)
自殺率:31.0人/10万人(日本18.5人/10万人)
と全ての面で日本を圧倒する結果になっています。
なぜこんなに?
という疑問を解決すべく,ロシアに行ってきました。
トランジットを挟んだせいでかなり時間かかりましたが,ロシア着。
空港にいきなりマクドナルドが。
うおおおロシアすごい!
やってきたのはサンクトペテルブルグ。
完全に観光してましたが,今回の目的はロシアの食生活です。
まずは現地のカフェにおじゃマンボウ(死語)
サイズ感が伝わりにくいのですが,拳ひとつ分はありそうなケーキです。
そして甘い。
パンの中にベリー系のジャムが入っているんですが,駄菓子のような甘さです。
先制パンチをくらいましたが,まだまだ!ということで,現地のスーパーへ行ってみましょう。
スニッカーズが売ってますが,明らかに日本のものより大きいです。
こちらのコーラも日本のものより1サイズ大きいです。
そこら中でこれ飲んでる人みかけたので,ロシアはアメリカになってしまったのかもしれません。
普通のスーパーでホールケーキ売ってます。
もちろん生クリーム全開。
ロシアのビール。
350mlはなく500mlが最低サイズ。
日本よ,これがロシアだ!
大きいサイズのものばかり撮ってると思いますよね?
ところが
このサイズしか売ってない。
俺は500mlサイズ専門店に来たのか?
さっきのケーキコーナー。
みてるだけで胃もたれします。
何もかもでかい。
イクラが500円弱で売ってたので購入。
イクラそのものは美味しいのですが,周りのクリームのくどさがすごい。
ひょっとしたらこの店が特別なのかも知れません。
外食してにいきましょう。
ペリメニ。水餃子みたいな見た目ですが,味も水餃子です。
とても美味しいのですが,これにたっぷりサワークリームをつけるのがロシア流。
マヨラー的なセンスを感じます。
24時間営業のレストラン。
力強いケーキが並ぶ。
極めつきはこれ。
バジルソースのパスタですが,チーズと油の濃厚さがすごい。
おそらく120gくらいでしたが,お腹がパンパンになりました。
と散々書いてますが,ロシア料理は美味しいです。
ビーフストロガノフも
ピロシキ頼んだら出てきたケーキも美味。
食べすぎる気持ち,わかります。
まだ足りないだろ?とばかりに飴をもらいました(汗)
と現地調査はここまで。
結構ヘビーな食生活をしてることが伝わったかと思います。
しかし,自分が調べたのはあくまで観光客目線のもの。
外食と実際の家庭で食べる料理は違うと思った方がいいでしょう。
そこで,前述の語学学習アプリでロシア人の方に色々聞いてみました。
ロシア人に聞いてみよう
(ちょっと雑談)
(ロシア語がわからなくてカツレツとフライドチキンを間違えました)
(この話題はスルーでした汗)
興味深い話が聞けました。
ロシアもすっかりアメリカのファーストフードが馴染んでいるんですね。
食べる量が多く,とくにマヨネーズと揚げ物が多い,というのが印象的でした。
データ通りな部分と,そうでない部分
今までは喫煙率が高いと逆流性食道炎が多いんだろう,という印象を持っていました。
確かにその通りではあったんですが,イランのように喫煙率は人並み,飲酒はほぼなし,という国でも逆流性食道炎が多いのは謎でしたね。
とはいえ,ロシアのようにタバコは吸う,お酒は飲む,食べまくるだとやはり逆流性食道炎になりやすいというのはよくわかりました。
時間を作り,イランでも現地調査して逆流性食道炎の原因に近づきたいと思います。